infolaw’s blog ~九州工業大学 情報関連法規(情報法・情報政策)

九州工業大学 情報工学部 情報関連法規授業に関するブログです。

5/13 講義のポイント その2

2.著作権法の処理手順を押さえよう

 

著作権法を学ぶ上で重視するのは、目次でしたね。特に法目的の利用と保護のバランス。そして、文化の発展に資するという点を押さえましょう。

これは、産業財産権(特許他)の所轄官庁が経済産業省であるのに対して、著作権法は、文化庁であるということにからめて覚えてもいいですね。

 

文化庁のホームページを参照しながら、復習してみましょう。

【出展】

www.bunka.go.jp

 

1.著作物にあたるか?

 

著作権法で保護の対象となる著作物であるためには,以下の事項をすべて満たすものである必要があります。

(1)「思想又は感情」を表現したものであること

→ 単なるデータが除かれます。

(2)思想又は感情を「表現したもの」であること

→ アイデア等が除かれます。

(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること

→ 他人の作品の単なる模倣が除かれます。

(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること

→ 工業製品等が除かれます。

 具体的には,小説,音楽,美術,映画,コンピュータプログラム等が,著作権法上,著作物の例示として挙げられています。
 その他,編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,編集著作物として保護されます。新聞,雑誌,百科事典等がこれに該当します。』

 

2.著作者、著作権者はだれか?

 

 →著作者が、著作権を他者に譲渡した場合、著作者と著作権者がわかれるケースがありましたね。

 →プロであるか否かや、年齢(幼稚園児)などは、著作権が発生するのには関係がありませんでした。

 

3.保護期間内か?

 →一定の保護期間。著作者の生存年月及びその死後50年間が原則でした。それを過ぎると自由に著作物を利用できるようになります。(=パブリックドメイン

 →登録制度というものがありますが、特許と違いこちらは、”発生”させる要件ではないので、混乱しないように注意しましょう。

 

4.権利の内容は?

 →18-20条

 著作者人格権というものがありました。公表、氏名表示、同一性保持権でしたね。一身専属兼なので譲渡できません。

 →21-28条

 複製権(Copyright)をはじめとして、様々な権利(=支分権)が並んでいます。

 27、28条の翻案権は、仮にすべてを譲渡すると書いても、契約書などに特掲しないと譲渡ができませんでしたね。(61条)

 

5.自由に使える場合(制限規定)

 →米国では、一般規定としてフェアユースという考えがありますが、日本の法体系では、私的利用の場合(30条)などを具体的に列挙していましたね。

 →重要なのは、私的利用、教育目的利用、図書館での利用です。

 

6.権利者への許諾

 →単なるデータや、アイディアなど著作物にあたらないものや、保護期間を過ぎたもの、私的利用などの制限規定にあたるものを除き、権利者への許諾を得ないと利用ができません。あるいは、出版権の設定をうけたり、権利を譲渡してもらうという方法もああります。

 →ここで困るのが誰が著作者か、著作権者かがわからない。例えば、無名の著作物に関する扱いでした。 その場合は、裁定制度というものがありましたね。

 

詳しくは、以下文化庁のページ参照してみましょう。手続きの流れや連絡先がわかりやすく掲載されていますよ。

 

www.bunka.go.jp

 

 

 

5/13 講義のポイント その1

第1回目の6時間わたる講義お疲れさまでした。

 

いくつかポイントをておきますのでキーワードを復習してください。

 

1.インターネットにおけるルール形成は、どのようなプレイヤーがになっているか?国家、国土、国民、憲法を準備して対応した近代の発明。立憲民主主義の限界は?

 

→ (憲法99条)から紐解きましたね。憲法を守る義務を課せられているのは、主に国家だったりします。国家以外にもパワーをもつプレイヤーがあらわれたときに日本では、”私人間効力”(民法709条、三菱樹脂事件昭和女子大事件など)という法理をもちいて対応してきました。

私人間効力 - Wikipedia

 

しかし、巨大プラットフォーマ―、ボーダレスなサイバースペース、ユーザー、では、憲法の想定していたものと前提が大きく異なります。

 

→いち早くこの点に気づいて提言を行ったのがLessigのCODEという書籍2000年初めに出た書籍でした。彼は、law norm marketに加え、 architectureの重要性を指摘します。

media.accel-brain.com

→情報関連法規は、6法のように法典のない分野です。

とはいえ、やみくもに想定世界の世界法を考えても何も進歩がありません。大切なのは、現実をとらえながらどの切り口から切り込み整理しているかを意識することでした。(=サイバー犯罪、メディア法、プライバシー、表現の自由、名誉棄損、著作権)あるべき法を構想するには、しっかりとしたある法(=核)をつくることが大切です。

なので、今回の講義は、大きく4つのブロックにわかれているのですが、前半2回で著作権法の応用レベル(=ビジネス著作権検定上級)まで、たどり着くように進めていき、後半2回で幅広い情報法の争点を扱います。

 

→もうひとつ情報関連法規では、ルール形成戦略という視点が大切です。

米国は、著作権法をオプトインでなく、オプトアウトを採用することで、googleWEBサービスの発展を助け世界を制圧しました。つまり、事前に全ての承諾をとらないといけないのか?後から削除依頼があったもののみ削除すればいいのか?とい違いです。

前者(=日本)ですとどんなに技術が優れていても、歯抜けの検索エンジンしかつくれません。また、著作者がわからない著作物への対応も難しいということになります。

【資料】文化審議会著作権分科会基本問題小委員会 2010.4.9 グーグルが提起した著作権問題 国際大学 GLOCOM 客員教授(米国弁護士) 城所岩生

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/kihon/h22_01/pdf/shiryo_5_2.pdf

【記事】

agora-web.jp

 

 

【書籍】フェアユースは、経済を救う 

  Amazon CAPTCHA

 

よく、技術は優れているが、マーケティングがとか、言われますがWEBサービスでは、

ルール形成戦略の視点がなかったことが敗因の大きな理由のひとつといえるでしょう。

 

とはいえ、そうした経験がないという訳ではなく、例えば、ソニーのベータマックス事件訴訟は、訴訟を通じて、”タイムシフト”という概念を広めています。決して日本が未経験でも不得意分野という訳でもありません。

 

www.sony.co.jp

 

著作権法の法制度のあるべき法という大きな視点を学ぶこととで、実践では、ルール形成戦略の視点をもつエンジニア【技術に堪能なる士君子】になってください。

 

www.meti.go.jp

 

 

 

いよいよ今週5/13開講です。

みなさん。こんにちは、担当講師の藤岡です。

いよいよ情報関連法規が今週の末からはじまります。

土曜日の午前から夕方まで4コマの6時間スペシャルですが、あきさせない授業を展開しますのでお楽しみに。

濃い目のシラバスに人数が減ってしまうのではと危惧していましたが、、、、|д゚)

思いのほか昨年より受講生が1.5倍に増えました。(^^)/

お休みの日に学んでやろう。という気持ちをもった皆さんの期待を裏切らないよう精一杯準備していきます。

今回は、前回の受講生の声で演習(=具体例をより多くしてほしい)という要望がありましたので随時クイズ形式で入れていきます。

あくまでも、どう考えればいいのかをトレーニングするためのものなので、気楽にとらえてくださいね。

が、”どのような筋道で考えたか?、何を根拠にしたか?”は、明確に。

はじめは、どこから手をつけていいかわからないのが当たり前なので、

授業の中で示す考えの筋道と根拠(=条文)

とその探し方(=ここ重要)を押さえてくださいね。

 

今年度の流れは、以下のとおりです。

各日ごとにテーマを作ってますのでそれを頭において出席するとよいですよ。

全部で4日ありますが、前半の2回で確固たる著作権法の基礎と応用を築きます。

2WAY方式で、1日に一回りします。なので、2日うけると全体を2回回すことに

なります。

後半の2回では、情報関連法規にふさわしいネット上の法律問題をガンガン

取り上げていきます。

物理学に例えると前半の2回は、高校物理→大学の力学などみたいな位置づけ。

後半は、統計物理や現代物理学のような位置づけです。

前半があいまいだと、後半は相当わけがわからなくなるので、前半をしっかり

まなんでくださいね。

ということで、

デジタル覇権戦争と著作権(フェアユース)

城所岩生先生の著書には、こうある。

短期間でグローバル市場を制覇してしまうIT企業が、次々と米国から生まれている。その中でもフェアユースの恩恵を最大限に享受したのはGoogleである。Googleの創業者もそれを認めていて、英国のキャメロン首相は2010年に著作権法改革を命じた際、Googleの創業者がフェアユースのない英国で起業するつもりはなかったと語った事実を紹介した。

 

internet.watch.impress.co.jp

『情報社会基盤技術における地球規模の覇権争い』

これ面白そう。
データの寡占化、特定の国家による価値の保証を持たない仮想通貨などを『情報社会基盤技術における地球規模の覇権争い』の文脈で理解できそう。

◆情報社会基盤卓越講義

https://sites.google.com/site/iiidls2017/home

「国境を越えて進むデータの寡占化、ソフトウェア化による通信基盤の輸出、特定の国家による価値の保証を持たない仮想通貨など、情報社会基盤技術における地球規模の覇権争いが進む中、東京大学大学院・情報学環では、文理越境の観点から、情報社会基盤技術の最新動向の把握が必要であると考え、2017年2月から「情報社会基盤卓越講義シリーズ」を開講します。

受講対象者は一般とします。」WEBページより

各講義のポイント(第4回~第6回)

今回は、第4回~第6回までの講義のポイントをお伝えします。

4. 著作物・著作者 ~誰の何を保護するのか?(=射程を意識する)  
5. 著作権著作者人格権・保護期間 ~権利の内容①
6. 実演家の権利・レコード製作者の権利・放送事業者の権利 ~権利の内容②


第4回~6回で本格的に著作権法について切り込んでいきます。

情報関連法規を解明するという目的がありますので、一般的な理論を押さえつつも

情報ネットワーク上に特化した論点を扱っていきます。

まず、著作権法の基本となるのは、著作権がコピーライト(©マークのCは、

CopyrightのCです)であることからも、複製権(21条)がポイントに

なります。

 

だから、

 

・21条に始まり、28条までに著作者の権利がうたわれています。

 

そして、その前の18条から20条までが著作者人格権です。

 

はい。丸暗記。

 

とすると、面白いほどわけがわからなくなっていきます。

是非、試さないでください( ´∀` )

 

なぜ、21-28条、18条ー20条と講師は、瞬間的に指摘できるのでしょうか?

 

それは、目次から探したからです。目次を見てみてください。

著作権法 (政府の条文集)

どんな権利があるのか?と目的をもって探すと、どうも2章に書いてあるようです。

 

 第二章 著作者の権利
  第一節 著作物(第十条―第十三条)
  第二節 著作者(第十四条―第十六条)
  第三節 権利の内容
   第一款 総則(第十七条)
   第二款 著作者人格権(第十八条―第二十条)
   第三款 著作権に含まれる権利の種類(第二十一条―第二十八条)
   第四款 映画の著作物の著作権の帰属(第二十九条)
   第五款 著作権の制限(第三十条―第五十条)

その中で、権利の”内容”というところが該当しそうですね。

そこで、その該当ページを読むわけです。

 

そして、最後に著作権の制限。いわば例外。

原則→例外という配列になっていますね。

 

そうです。わからなくなる原因は目次を読まないで、なんかの書籍に

かいていたのを手掛かりにそこだけを読むからです。

 

ですから、条文集は、あたまから読まない!

目次から目的意識をもって条文にアクセスするということが大切です。

 

特に著作権法は、つぎはぎをしてできている法律であり、権利の束といわれる

こともあり、頭からよんでいくと間違いなく訳がわからなくなります。

 

ですので、講師が21条といったからではなく、目次をみてさがして

アクセスするようにしてください。これだけでも、相当使いこなしに

差が出ます。

 

【続く】

各講義のポイント (第1回~第3回)

講義を聞く際には、今日はこの疑問を解決しよう。あるいは、〇〇がわかるようになっていよう。という目的意識が大切です。

 

が、しかし、それが何かがあらかじめ分かっていればいいのですが・・・。大学の講義は、幅広い専門性の高いテーマを扱うためその点がぼやけてしまい、わかったつもりがつもりつもってわからなくなってしまうことも多々あります。

 

講義が進んでいくのは、教壇で思いつきで瞬間芸を重ねているのではなく、どこかしらの目的に向けて15回の旅をしていくようなものなのです。

 

法律も”目次が大切”ということを初回で伝えますが、いまどこにいて、なにを議論しているのか?いわゆる位置づけが大切だからです。

 

そこで、各回の講義のポイントを示します。

 

情報関連法規は、原則1~3回、4~6回など3回ごとで一つのテーマを体系的にマスターできるように設計しています。

 

まず、第1回~第3回

1. 情報ネットワーク社会と法~判例による法創造とCODEの比較 ~判例による法創造とCODEの比較
2. 知的財産権法の全体構造 ~産業革命・情報革命と知的財産権
3. コンテンツ流通ビジネスの仕組みと著作権法

 

ここでは、条文の読み方と捉え方。判例の読み方。をお伝えします。また、国境を超え

るサイバー空間でのルールは、どのように作られるのかを立憲民主主義の”国家”での比較をしながら紐解いていきます。

 

ポイントは、当たり前だと思っていた前提がなくても、ネットワーク組織的・自律的にルールが生成され展開し、発展(ときには破綻・・・。)するということです。

 

例えば、中学・高校で、お金は、日銀(=中央銀行)が発行するというものをきいたことがあるともいます。

 

貨幣は、紙。ですから、大切なのはそこに沁み込んでいる価値ですね。そして、通貨があることで様々な等価交換が可能になるわけです。

 

紙ですから、たくさん刷ろうとおもえばいくらでもすることができますが、刷ったからといって、価値が増大するわけではないので、たくさんすればするほど1円あたりの価値は減少していきます。 そこで、どのくらいを刷るのがだとうか?ということで、発行量の調整が必要になります。

 

中央銀行は、その発行量を調整することでインフレを防いだりしています。(=金融政策)また、日銀法により独立性が担保されており、時の政府が好き勝手にどんどんお札を刷らせることはできない。という風にルールを作りました。

 

しかし、皆さんがご存知のビットコインは、この中央銀行がありません。

 

不思議ですよね。では、なぜ成り立つのか?という点に考えを持つことが大切です。さらにその流通を増やすべきか?そうでないのか?を、自分なりの意見を過去の知見と根拠をもって展開することが大切です。

 

1~3回では、

・かたちのない”知的財産”という情報の財の性質

 (⇔有体物、民法

・どんなふうに流通しているのか?

 (→CD,カセットテープなどの媒体に載せた流通から、情報が独立してネットワークを流通。)

・なにを目的にどのようなルールがつくられているのか?

 

の全体構造をみていきます。

 

特に一番の原則の民法と知的財産の同じところとそうでないところ。

 

次に知的財産の中の特許法などの産業財産権著作権の同じところとそうでないところ。

 

ネットワークに情報の財が独立して自律・分散的に流通するようになったことによる変化。(=AI,3Dプリンタ、ロボ)

 

頭の中に見取り図をつくることを目的とします。

 

次回は、


4. 著作物・著作者 ~誰の何を保護するのか?(=射程を意識する)
5. 著作権著作者人格権・保護期間 ~権利の内容①
6. 実演家の権利・レコード製作者の権利・放送事業者の権利 ~権利の内容②

 

を解説します。