infolaw’s blog ~九州工業大学 情報関連法規(情報法・情報政策)

九州工業大学 情報工学部 情報関連法規授業に関するブログです。

「昭和の人生すごろく」のコンプリート率は、既に大幅に下がっている。  平成29年5月  次官・若手プロジェクト

◆とても興味深い資料です。揺らぐ時代に生きる学生諸君の客観的な全体地図として是非、一読を。


「昭和の人生すごろく」のコンプリート率は、既に大幅に下がっている。

 不安な個人、立ちすくむ国家
 ~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~

 平成29年5月
 次官・若手プロジェクト

 http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf

ヤマハ JASRACを提訴へ  ~演奏権は、どこまでおよぶか?練習目的と鑑賞目的。そして、教育。

みなさん。先日の講義でお話しした、著作者の権利は、どこまで及ぶか?

(射程)の問題です。

 

(上演権及び演奏権)
第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

 

音楽教室での演奏が、「①公衆に②直接見せ又は聞かせることを目的として」

にあたるかわからないですね。

 

①「公衆」にあたるか?

2条二十三  

→この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

ヤマハ音楽教室では、多数の特定の生徒に対して演奏をしている。

→よって、公衆に該当する。

②聞かせる目的といえるか?

 

ここは、双方の主張がわかれるところです。(=だから、争いになる点で争点。)

 

双方の主張は、

JASRAC:人気曲を使って、生徒が魅力を味わっている以上聞かせることが目的。

ヤマハ:技能の伝達なのだから、聞かせる目的ではない。

 

さて、裁判所がどう判断するか?が見ものですね。

 

・教育目的の利用(35条)にあたるのでは?と感じた方は、よく聞いていましたね。

しかし、今回のヤマハ音楽教室は、

 

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条  学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 

「営利を目的として設置されているものを除く。」とありますから、教育目的の利用制限で対抗するのは難しそうです。

 

news.yahoo.co.jp

 

次回をお楽しみに。

5/13 講義のポイント その2

2.著作権法の処理手順を押さえよう

 

著作権法を学ぶ上で重視するのは、目次でしたね。特に法目的の利用と保護のバランス。そして、文化の発展に資するという点を押さえましょう。

これは、産業財産権(特許他)の所轄官庁が経済産業省であるのに対して、著作権法は、文化庁であるということにからめて覚えてもいいですね。

 

文化庁のホームページを参照しながら、復習してみましょう。

【出展】

www.bunka.go.jp

 

1.著作物にあたるか?

 

著作権法で保護の対象となる著作物であるためには,以下の事項をすべて満たすものである必要があります。

(1)「思想又は感情」を表現したものであること

→ 単なるデータが除かれます。

(2)思想又は感情を「表現したもの」であること

→ アイデア等が除かれます。

(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること

→ 他人の作品の単なる模倣が除かれます。

(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること

→ 工業製品等が除かれます。

 具体的には,小説,音楽,美術,映画,コンピュータプログラム等が,著作権法上,著作物の例示として挙げられています。
 その他,編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,編集著作物として保護されます。新聞,雑誌,百科事典等がこれに該当します。』

 

2.著作者、著作権者はだれか?

 

 →著作者が、著作権を他者に譲渡した場合、著作者と著作権者がわかれるケースがありましたね。

 →プロであるか否かや、年齢(幼稚園児)などは、著作権が発生するのには関係がありませんでした。

 

3.保護期間内か?

 →一定の保護期間。著作者の生存年月及びその死後50年間が原則でした。それを過ぎると自由に著作物を利用できるようになります。(=パブリックドメイン

 →登録制度というものがありますが、特許と違いこちらは、”発生”させる要件ではないので、混乱しないように注意しましょう。

 

4.権利の内容は?

 →18-20条

 著作者人格権というものがありました。公表、氏名表示、同一性保持権でしたね。一身専属兼なので譲渡できません。

 →21-28条

 複製権(Copyright)をはじめとして、様々な権利(=支分権)が並んでいます。

 27、28条の翻案権は、仮にすべてを譲渡すると書いても、契約書などに特掲しないと譲渡ができませんでしたね。(61条)

 

5.自由に使える場合(制限規定)

 →米国では、一般規定としてフェアユースという考えがありますが、日本の法体系では、私的利用の場合(30条)などを具体的に列挙していましたね。

 →重要なのは、私的利用、教育目的利用、図書館での利用です。

 

6.権利者への許諾

 →単なるデータや、アイディアなど著作物にあたらないものや、保護期間を過ぎたもの、私的利用などの制限規定にあたるものを除き、権利者への許諾を得ないと利用ができません。あるいは、出版権の設定をうけたり、権利を譲渡してもらうという方法もああります。

 →ここで困るのが誰が著作者か、著作権者かがわからない。例えば、無名の著作物に関する扱いでした。 その場合は、裁定制度というものがありましたね。

 

詳しくは、以下文化庁のページ参照してみましょう。手続きの流れや連絡先がわかりやすく掲載されていますよ。

 

www.bunka.go.jp

 

 

 

5/13 講義のポイント その1

第1回目の6時間わたる講義お疲れさまでした。

 

いくつかポイントをておきますのでキーワードを復習してください。

 

1.インターネットにおけるルール形成は、どのようなプレイヤーがになっているか?国家、国土、国民、憲法を準備して対応した近代の発明。立憲民主主義の限界は?

 

→ (憲法99条)から紐解きましたね。憲法を守る義務を課せられているのは、主に国家だったりします。国家以外にもパワーをもつプレイヤーがあらわれたときに日本では、”私人間効力”(民法709条、三菱樹脂事件昭和女子大事件など)という法理をもちいて対応してきました。

私人間効力 - Wikipedia

 

しかし、巨大プラットフォーマ―、ボーダレスなサイバースペース、ユーザー、では、憲法の想定していたものと前提が大きく異なります。

 

→いち早くこの点に気づいて提言を行ったのがLessigのCODEという書籍2000年初めに出た書籍でした。彼は、law norm marketに加え、 architectureの重要性を指摘します。

media.accel-brain.com

→情報関連法規は、6法のように法典のない分野です。

とはいえ、やみくもに想定世界の世界法を考えても何も進歩がありません。大切なのは、現実をとらえながらどの切り口から切り込み整理しているかを意識することでした。(=サイバー犯罪、メディア法、プライバシー、表現の自由、名誉棄損、著作権)あるべき法を構想するには、しっかりとしたある法(=核)をつくることが大切です。

なので、今回の講義は、大きく4つのブロックにわかれているのですが、前半2回で著作権法の応用レベル(=ビジネス著作権検定上級)まで、たどり着くように進めていき、後半2回で幅広い情報法の争点を扱います。

 

→もうひとつ情報関連法規では、ルール形成戦略という視点が大切です。

米国は、著作権法をオプトインでなく、オプトアウトを採用することで、googleWEBサービスの発展を助け世界を制圧しました。つまり、事前に全ての承諾をとらないといけないのか?後から削除依頼があったもののみ削除すればいいのか?とい違いです。

前者(=日本)ですとどんなに技術が優れていても、歯抜けの検索エンジンしかつくれません。また、著作者がわからない著作物への対応も難しいということになります。

【資料】文化審議会著作権分科会基本問題小委員会 2010.4.9 グーグルが提起した著作権問題 国際大学 GLOCOM 客員教授(米国弁護士) 城所岩生

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/kihon/h22_01/pdf/shiryo_5_2.pdf

【記事】

agora-web.jp

 

 

【書籍】フェアユースは、経済を救う 

  Amazon CAPTCHA

 

よく、技術は優れているが、マーケティングがとか、言われますがWEBサービスでは、

ルール形成戦略の視点がなかったことが敗因の大きな理由のひとつといえるでしょう。

 

とはいえ、そうした経験がないという訳ではなく、例えば、ソニーのベータマックス事件訴訟は、訴訟を通じて、”タイムシフト”という概念を広めています。決して日本が未経験でも不得意分野という訳でもありません。

 

www.sony.co.jp

 

著作権法の法制度のあるべき法という大きな視点を学ぶこととで、実践では、ルール形成戦略の視点をもつエンジニア【技術に堪能なる士君子】になってください。

 

www.meti.go.jp

 

 

 

いよいよ今週5/13開講です。

みなさん。こんにちは、担当講師の藤岡です。

いよいよ情報関連法規が今週の末からはじまります。

土曜日の午前から夕方まで4コマの6時間スペシャルですが、あきさせない授業を展開しますのでお楽しみに。

濃い目のシラバスに人数が減ってしまうのではと危惧していましたが、、、、|д゚)

思いのほか昨年より受講生が1.5倍に増えました。(^^)/

お休みの日に学んでやろう。という気持ちをもった皆さんの期待を裏切らないよう精一杯準備していきます。

今回は、前回の受講生の声で演習(=具体例をより多くしてほしい)という要望がありましたので随時クイズ形式で入れていきます。

あくまでも、どう考えればいいのかをトレーニングするためのものなので、気楽にとらえてくださいね。

が、”どのような筋道で考えたか?、何を根拠にしたか?”は、明確に。

はじめは、どこから手をつけていいかわからないのが当たり前なので、

授業の中で示す考えの筋道と根拠(=条文)

とその探し方(=ここ重要)を押さえてくださいね。

 

今年度の流れは、以下のとおりです。

各日ごとにテーマを作ってますのでそれを頭において出席するとよいですよ。

全部で4日ありますが、前半の2回で確固たる著作権法の基礎と応用を築きます。

2WAY方式で、1日に一回りします。なので、2日うけると全体を2回回すことに

なります。

後半の2回では、情報関連法規にふさわしいネット上の法律問題をガンガン

取り上げていきます。

物理学に例えると前半の2回は、高校物理→大学の力学などみたいな位置づけ。

後半は、統計物理や現代物理学のような位置づけです。

前半があいまいだと、後半は相当わけがわからなくなるので、前半をしっかり

まなんでくださいね。

ということで、

デジタル覇権戦争と著作権(フェアユース)

城所岩生先生の著書には、こうある。

短期間でグローバル市場を制覇してしまうIT企業が、次々と米国から生まれている。その中でもフェアユースの恩恵を最大限に享受したのはGoogleである。Googleの創業者もそれを認めていて、英国のキャメロン首相は2010年に著作権法改革を命じた際、Googleの創業者がフェアユースのない英国で起業するつもりはなかったと語った事実を紹介した。

 

internet.watch.impress.co.jp